「基本セット2011」のカードのシールド戦向けのカード評価をまとめてみました。
どういう話なのか少し説明しないと意味不明ですかそうですか。
以前からやってる話ではありますが、新しい読者さんのこともありますからなー。

さてみなさん、シールド戦のデッキはどうやって組んでますか?
たぶん、出てきたカードをテーブルに分類しながら並べていって、デッキの核になりそうなカード群を探し、色を決めて、デッキに入るカードを選んで、みたいな作業をしますよね。
マジック・オンラインも、そういう作業ができるように作られています。
カードをヴィジュアル表示して、あっちに動かしこっちに動かししながらデッキを組めるインタフェースになってるんです。

ところが、わたしの場合、そのやり方だとどうもうまくありません。
うちのパソコン、実はとても遅いので、「カードを分類しながら並べて」をやってる途中で構築制限時間の20分を過ぎてしまうんです。
なにせ、一枚のカードを動かすだけで数秒以上かかります。
そんなことやってらんないんですなー。
じゃあどうするかというと、カードをリスト表示しながら、メモ帳にカード名を書いてデッキを構築してたんですね。
メモ帳でデッキができたら、リスト表示のまま操作して、デッキを作ってたわけです(リスト表示での操作は、それほど時間はかかりません)。
まあ、それでも、デッキ提出時刻に間に合わずに提出できなかったことは多々あったのですが。

しかし、誰でも分かると思いますが、

こんな方法ではまともなデッキは作れません。

メモ帳にカード名を書く時間だって馬鹿になりません。
ただ書いてるわけじゃなくて、テーブルにカードを並べるときみたいに整理しながら書くわけです。
実質デッキを作るために考えてる時間は、構築制限時間の半分以下です。
その結果、だいたい、サイドボーディングのときに、「あれ? こんなカードあったんだ」とか思うことになるのです。
あるいは、4ラウンド終わってレポート書いてるときに。
二次元空間にカードを配置することで情報を整理するのは、人間にとってとても効率のいい方法なんですね。
それをやれないことのハンディはけっこう大きいのです。

そんなわけで、マジックの上手い下手以前の問題で全然勝てなくて悔しかったわたしは、もうちょっと賢い方法を使うことにしました。
その、二次元空間にカードを配置して整理するのに近い作業をやるプログラムを作ったのです。
パックをもらったら、まず、そのリストをCSV出力します。
そしたらそれを自動処理して、各色ごとの強そうなカードをピックアップし、ついでにカードの評価点の合計を出力して、どの色の組み合わせでデッキを組むのが強そうかをポイント表示するところまで、プログラムにやらせます。
その出力結果を見て色を決めたら、後はデッキに入れるカードをその色から選ぶだけでよく、見落としが少なくなります。
しかし、それをやるためには、各カードに評価点をつけなくてはなりません。
それが、ここでわたしがまとめているカード評価です。

そういう事情ですので、この評価点は、ドラフト用のカード評価とはちょっと違った測度で評価されています。
ドラフト用の評価は、「どのカードをピックするか」を決めるための評価ですよね。
しかし、わたしがやりたいのは、所与のカード・プールに対して、「どの色でデッキを組むか」を判断することです。
そのカードが存在することが、色の選択に影響を与えるようなカードに高得点を与えるような評価になります。
それは、おおむねカードの強弱に一致してはいるのですが、やっぱり細かいところで少し違ってきます。

さて、今回も「ワールドウェイク」から採用しているカード評価基準を使います。

S: (極めて強力:ゲームの状況に極めて大きな影響を与える)
A: (相当強力:サイズの大きな回避生物、強力な除去、大きなカード・アドバンテージ)
B: (強力:回避生物、除去、安価なファッティ、全体強化、カード・アドバンテージ)
C: (有用:デッキがその色になるなら概ね入る。標準サイズ生物、限定除去、確定カウンター、強力な強化/救助、マナ支援)
D: (限定的:デッキの穴埋めになら使われる。貧弱な生物、限定的なコンバット・トリック、ディスアドバンテージ)
E: (不要:普通はデッキには入らない。単純なライフ・ゲイン、色替え、構築を想定した能力)

もうちょっと詳しく述べましょうか。

・E評価
弱いカードを弱いと言うのは簡単ですなー。
メイン・デッキには決して入らないカードがここに分類されます。
単純に基本土地より弱いカードや、サイドボード後にしか入らないカードなどです。

・D評価
たいていはこれよりいいカードがあるはずだけど、たまたま無い場合は、仕方なく穴埋めで使うこともあるかな、というレベルのカードです。
このカードの色がメイン・デッキの色になったときに、このカードがデッキに入る可能性が半分に満たないようなカードは、ここに分類されます。

・C評価
メイン・デッキがこのカードの色になった場合、入ることの方が多いよ、というカードがここに来ます。
標準サイズの生物は大抵ここに分類されます。

C評価以下のクラスのカードの比較対象は、同じ色の他のカードです。
その色が採用されたときに、デッキに入るかどうか、という観点で分類されるからです。

・B評価
B評価から上は、比較対象が変わります。
つまり、同じ色の他のカードではなく、他の色の同じマナ域のカードに比べて優れているかどうかが問われます。
そのようなカードが多くある色をやりたいわけです。

・A評価
大抵のデッキに入る最高水準のカードがこのクラスです。
M11の場合、5マナ4/4飛行がひとつの基準になります。
アンコモンに存在するこれらのカードが、大抵のデッキが獲得できる最も大きな回避クロックになるでしょうから。
コモンの生物では、マナが十分あるときの《夜翼の影》を除き、4/4飛行を止められるものはありません。
逆に、4/4飛行を取り除ける除去は、A評価の価値があります。

・S評価
運のいいヒトが使える、環境最高のカードです。
速やかな勝利に直結する効果、圧倒的な盤面の優位性の獲得、到底挽回困難なカード・アドバンテージ、などなど。
M11の場合ですと、6マナ以上のカードについては、相手が4/4飛行でクロックを刻んでます、という状況を一発でひっくり返せるかどうかがひとつの基準になります。

このようにして評価した上で、S/A/B/C/D/E=6/5/4/2/1/0とポイントを割り振ります。
B評価とC評価のポイントが少し離れているのは、「そのカードがあるからその色をやりたい」というカードと、「その色をやるならそのカードを使う」というカードとの差です。
まあ、このスケールがいいかどうかは怪しいところなんですが(B評価のカード3枚とS評価のカード2枚は本当に同等? とか)、それを実戦を通じて検証していきたいということでもあります。

わたしのプログラムは、カード・プールを与えられると、10種類ある2色の組み合わせについて、その2色のデッキに入りそうなカードをピックアップし、その中からポイントの高い順に23枚のカードを取り出して、その合計ポイントを計算します。
その、10種類の2色の組み合わせ毎の合計ポイントから、どの2色の組み合わせでデッキを組むのが良さそうかを判断するというわけです。

上記に加えて、次の補助評価指標を使います。

P評価 ... 特定の種類のカードがプールに多い場合に加点/減点すべき種類のカード。
Q評価 ... 対戦相手のデッキによっては加点/減点すべき種類のカード。

P評価は、例えば、種族のロードとかです。やけにゴブリンの多いプールだったら、《ゴブリンの酋長》はちょっと点数を上げるとか。
Q評価のつくカードは、例えば渡りとかエンチャント破壊とかで、サイドボード候補になります。


それで、実際にM11のカードを評価した結果、各評価はこういう分布になりました。

S:14種類 0.25枚/パック
A:25種類 1.08枚/パック
B:51種類 3.23枚/パック
C:55種類 3.90枚/パック
D:46種類 3.67枚/パック
E:38種類 1.88枚/パック

参考までに、最近のカード・セットでの評価値はこうでした。

「エルドラージ覚醒」
S:10種類 0.15枚/パック
A:21種類 0.90枚/パック
B:52種類 3.20枚/パック
C:69種類 5.07枚/パック
D:55種類 3.73枚/パック
E:21種類 0.96枚/パック

「ワールドウェイク」
S: 7種類 0.19枚/パック
A:14種類 0.70枚/パック
B:32種類 2.62枚/パック
C:48種類 5.48枚/パック
D:36種類 4.79枚/パック
E:16種類 1.00枚/パック

「ゼンディカー」
S: 5種類 0.28枚/パック
A:30種類 2.14枚/パック
B:36種類 2.19枚/パック
C:76種類 4.57枚/パック
D:64種類 3.83枚/パック
E:18種類 0.99枚/パック

比較すると、「基本セット2011」は、E評価が突出して多いですなー。
そして、B評価以上のカードの割合は、「エルドラージ覚醒」よりも少し良く、「ゼンディカー」と同じくらいです。
ただし、「ゼンディカー」と比べると、A評価以上の割合が低くなっています。

デッキの色毎に集計してみました。
単位はポイント/パックです。

「基本セット2011」
白単: 8.40 青単: 8.10 黒単: 8.45 赤単: 6.84 緑単: 7.46
白青:14.51 青黒:14.56 黒赤:13.30 赤緑:12.31 緑白:13.86
白黒:14.83 黒緑:13.89 緑青:13.54 青赤:12.93 赤白:13.23

黒が強く緑が弱くなるのはいつものことでして、おそらくわたしの個人的な趣味が反映していると思います。
でも、今回は赤がいつもに比べて相当弱いような。
ちなみに前回/前々回はどうだったかというと、こうでした。

「エルドラージ覚醒」
白単: 8.24 青単: 7.93 黒単: 9.49 赤単: 8.74 緑単: 7.09
白青:13.78 青黒:15.03 黒赤:15.98 赤緑:13.44 緑白:12.94
白黒:15.35 黒緑:14.19 緑青:12.62 青赤:14.28 赤白:14.59

「ワールドウェイク」
白単: 9.13 青単: 8.98 黒単: 9.94 赤単: 8.30 緑単: 7.82
白青:14.21 青黒:15.14 黒赤:14.33 赤緑:12.05 緑白:12.83
白黒:14.71 黒緑:13.23 緑青:12.33 青赤:13.05 赤白:13.16

「ゼンディカー」
白単: 9.81 青単: 8.61 黒単: 9.26 赤単: 9.70 緑単: 8.38
白青:15.32 青黒:14.90 黒赤:15.73 赤緑:14.93 緑白:15.09
白黒:15.99 黒緑:14.87 緑青:14.30 青赤:15.19 赤白:16.18

こうして比べると、「基本セット2011」は、「ゼンディカー」や「エルドラージ覚醒」に比べて、ちょっと弱いことが分かります。
6パックでのシールド戦だと思って、各2色デッキのプール毎の期待ポイントの平均値を比較すると、

「基本セット2011」:82.17
「エルドラージ覚醒」:85.32
「ワールドウェイク」:86.26
「ゼンディカー」:91.50

となります。
ここ一年で最弱の環境ですなー。
「ワールドウェイク」環境より弱い。
(「ワールドウェイク」環境のシールド戦は、「ゼンディカー」3パックが含まれることに注意です。)

平均して4点弱いとするとB評価のカード一枚分少ない計算です。
これは、もしかすると、ちょっと遅めで爆弾投下で終了な環境なのではないかしら。
うーむ。

次回からは「基本セット2011」のカードに関する評価をまとめます。
てなわけでつづくー。

コメント

maa
maa
2010年7月21日16:15

というわけで、そのプログラムを下さい(笑)

いく
2010年7月21日19:54

差し上げるのは構わないのですが、bashスクリプトと、そこから起動されるgawkスクリプトの二本立てなんですけど。
bashとgawkが動く環境でないと使えませんよ。cygwinとか。

listener
2011年2月21日9:05

・まず、そのリストをCSV出力します。
・各色ごとの強そうなカードをピックアップ
・カードの評価点の合計を出力して、どの色の組み合わせでデッキを組むのが強そうかをポイント表示するところまで、プログラムにやらせます。

なんとゆう合理的な方法なんでしょう!
シールドの特性からいって、最初の作業としてこれほどのものはないと思います。

最初に大きなハンデがあったから、それを乗り越える工夫ができたんですね。
いやいや、MTG抜きにしてもいい話を聞かせてもらいました。感動。

いく
2011年2月21日17:31

横着できるところは横着する主義なのです。

働いたら負けなのです。

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